2008年1月23日水曜日

変換装置

N氏のご招待を受け神戸に行ってきた。何年ぶり、いや何十年ぶりの神戸だろう?
N氏自慢のオーディオでレコードを視聴後、有馬温泉に入り、滅多に食べられない様な牛タンに舌鼓、西村コーヒーも飲ませて戴きポートピアホテル16階に宿泊。何十年に一度あるかないかの贅沢三昧だ。
中学を卒業してすぐ仕事を始め、18歳で会社を立ち上げ40歳代で既に500人もの従業員を持つN氏は紛れも無く若い青年実業家だ。

10歳代から20歳代は人にとって何かがむしゃらに頑張れる時だと思う。大抵の人はそのエネルギーを勉強やスポーツに向ける事が多い。目的の到達点を受験に置く学生にとっては志望校に入学する事で既に目的は達せられ、肝心のその先の将来を見失う事も多い様に思う。大学の卒業証書を持っていれば生涯保障付きのサラリーマンになれる、そんな学歴社会は少子化で全学入学時代となり既に終わったはずだ。おまけに入社してもいつその会社が倒産するか又はリストラに遭うかと冷や冷やさせられる時代なのだ。それにも係わらず「受験」と言う切り札を目の前にちらつかせ塾や家庭教師斡旋、高額な勉強教材を売りつけるお受験企業、目が飛び出る程の授業料を要求される私立校は小学生や幼稚園児から子供確保に必死だ。政府は「ゆとり教育は失敗だった!」と一転して国を挙げて小中学生の学力低下を何とか食い止めねばと躍起になっているが、進学塾にとっては棚から牡丹餅の話だ。
何だかね~??と思いながらも勉強嫌いの息子や娘に「受験生なんやからちょっとはまともに勉強せえ!」と言う自分の不甲斐無さが虚しい。

N氏のポルシェに同乗しながら、学歴や学校教育がいかに社会では役に立たないかを再度考える。
むしろ彼はその事を彼自身のエネルギーに変換してきたのかも知れないと、少し無邪気さの残る横顔に垣間見る。エネルギーのある者が持ち合わせる変換装置。

今年の秋、三度目のランディ・ウェストンのコンサートを上賀茂神社で行う。
そのランディと会った方からのメッセージは「昨年、マックス・ローチさんや息子さんが亡くなられ、少しお気を落されていらっしゃるご様子でしたが、だからこそ、残り少ないジャズの歴史の生き証人として、今年で82歳になるが、私は頑張らなければならない!と大変使命に燃えていらっしゃいました。」との事。

ランディ・ウェストン、82歳の高齢でも未だ彼のピアノ演奏は進化し続けている。悲しみもエネルギーに変えてしまう変換装置を彼もまた持ち合わせているのだ。

4 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

初めて投稿させていただきます。大阪在住なので、お店には一ヶ月に一~二回お伺いするのが精一杯なのですが、LUSH LIFEさん、大好きです。
ブログも興味深く拝見しております。今回の変換装置のお話、前回の成人のお話、今年、成人式を迎えた子を持つ身として、いろいろと共感&考えさせられました。
これからも更新楽しみにしています。お店にも、また早く行きたいです。

lushlife さんのコメント...

choriさん
初コメントありがとうございます!
思いつくまま好き勝手な事を書いているブログですが、見て下さって嬉しいです。
LUSHにも又来て下さい。昨日今日とこちらは雪が吹雪いて寒いですが、レコードを聴きながら店の中から見る雪はなかなかオツなもんですよ。

やすこ さんのコメント...

神戸のお友達のことをお書きで、わたしも神戸に関わる三つの話をしたくなりました。

一つは真珠屋さんの女社長さんとのこと、何故ともない関わりから、深い友情に結ばれ、神戸で、時には京都祗園で舞子さんを交えてお遊びをしたりしました。

いま一人は歌人仲間でピアニスト、女性、二人とも京都の人間にはない知性と情熱にあふれ、はっきりとした生き方をお持ちでした。勿論、二人は震災には遭遇されました。

もう一人はわたしの父、いえわたしと父のこと。外地にいた父が帰国して、オリエンタルホテルに宿泊しました。現在のものでなく馨しい建物でありました。戦時中のこと、父は日本が負けることを知っていて、私との別れに帰国したのでした。わたしはまだ乙女子、それでも美しいドレスを買ってくれました。すぐに着せてくれて、綺麗だよといってくれました。父は母のことを思っていたと思います。さようならといって別れました。

三人とも、もうこの世の人ではありません。真珠屋さんの女社長さんからはその暖かい肝っ玉を、ピアニストからはショパンの音をいただきました。ありがとうございました。

lushlife さんのコメント...

やすこさん
やすこさんの神戸の思い出、素敵ですね。
オリエンタルホテルで綺麗なドレスを纏うやすこさんを想像するだけでうっとりしてしまいます!