40分間のドキュメンタリー映像で、ランディ氏が話す言葉をコンサートスタッフである山田君が和訳してくれた。字幕の付いていないこんなDVDは、彼の様な人がいないと英語力の無い私などはチンプンカンプンでとうてい理解できない。まずは山田君に感謝する。
衣食住は人間が生きていく上で最も大切なモノとされている。もしその次にと聞かれれば、それは音楽なのかも知れない。音楽は衣食住ほど直接的に人に働きかけないモノの様に思われがちだが、例えば最悪の状況で生きる希望を失くし掛けた時に音楽は勇気と希望を思い出させてくれる。音楽にはそんな治癒力があるのだ。かつてアメリカで黒人奴隷が過酷な労働をブルースを歌いながら乗り越え、理不尽な人種差別を受けながらも多くの素晴らしいジャズが生まれた様にランディ氏には確信を持って言える事があるのだ。音楽には人々に勇気と希望と安らぎを与える治癒力があると。そして今その事を彼は彼の音楽を通して伝道していく使命を感じていると言う。
このDVDはランディ氏の生い立ちから始まる。彼の父が言った言葉「お前はアメリカ生まれのアフリカ人なのだ」と言う事、最初にピアノを習った先生から「金の無駄使いだからピアノは止めた方が良い」と言われた事、コールマン・ホーキンスのレコードを通して多くのミュージシャンを知っていった事、カウント・ベーシー、ナット・キング・コール、アート・テイタム、セロニアス・モンク、デューク・エリントンなどのピアニストに影響を受け、又あまりにも身近にそれらの偉大なピアニストがいた為に29歳になるまでプロデビューが出来なかった事、そして彼の関心は祖国アフリカへと続く。
1961年にアフリカに渡り、3年間のクラブ経営と演奏、そしてモロッコでの大フェスティバルと多額の負債、又その後のアルバム「ブルーモーゼス」の大ヒットで負債が無くなりはしたものの一文無しとなってしまった事。その状況にあっても彼がアフリカで得たものは偉大であり彼の音楽や生活全てにおいてお金には代えられない貴重な体験がアフリカにはあったと。
美しい音楽、これは演奏がうまいとか下手という事ではなく、人々をどれ程幸せにするかという事なのだ。これは魂がどれ程こめられているかとも言えるのだろう。
ランディ・ウェストン 彼の奏でるピアノはそんな魂のこもった美しい音楽である。世界遺産の上賀茂神社で最高の演奏を聴ける日が待ち遠しい。